住友商事を1か月で辞めた話(後編)

まだ自分が大学を卒業して半年くらいの頃初めて勤めた会社、住友商事について書いています。

初めてそのオフィスに足を踏み入れたときは、
きれいで大きな自社ビル、周りの先輩はみなとてもバリバリ仕事をしていてかっこよく見えて、
自分も一流の大企業への仲間入りができたと嬉しい気持ちでした。

ですが私は結局1か月で辞めることとなってしまったのです。

この記事は後編です。前編はこちらです。

部長への恋

新しいことを学んでは、消化しきれず頭のパンクがひどくなっていく毎日。

そんな日々が相変わらず続いていました。

 

そんなころ、あろうことかFさんがこんなことを言い出しました。

「部長が素敵すぎる・・」

 

職場の上司に恋心を抱くのはめずらしいことではありませんが、このときFさんはかなり積極的でした。
部長と私たち2人が研修で外出したときも、部長にプライベートな質問をしてかなり困らせていました。

 

しかもこの部長さん・・なんと既婚者だったのです。

しかしそんなことはお構いなし。Fさんのアプローチは続きました。

私はそれどころじゃないほど毎日の仕事に必死でしたが、Fさんのアプローチは本人はおろかおそらく周りにも確実にバレているだろうという勢いになっていきました。

 

そんなとき突然、私の目の前からFさんがいなくなったのです。

Fさんにメールで尋ねると、仕事ができそうにないと早期に判断されて、突然契約を切られたとのこと。

「仕事ができそうにない?・・たった数週間で、もう判断されたということ・・・?」

私は大変戸惑いました。

真相は結局わからずじまいですが、おそらく部長に猛アプローチをかけたことも原因の一つになったのではないかなあ、と思います。

 

いよいよ独りぼっち

そんなわけでFさんを失ってしまった私は本当に独りぼっちになってしまいました。
ただでさえ苦痛な毎日だったのに、心のよりどころがなくなってますます辛くなる毎日です。

専属の先輩Mさんは私に毎日仕事を教えながら、思い通りにいかない私にあきらかに苛立っていました。
私が仕事がわからなくなってあたふたしたり、質問したりするたびに、そのあきらかに苛立った目から「また質問する気?」と聞こえてくるようでした。

自分の作業も手一杯で、更に私に思いのほか手がかかったのでますますイライラしてきたのでしょう。
当時の私はエクセルやワードなどの初歩的なことさえ知らなかったので、
「よくこんな何にも知らない状態で来たな!」と腹が立っていたのもあるかもしれません。

私も怒らせることはわかっていたのでできることなら何も質問などしたくはありませんでしたが、
どんなにノートを見返してもわからない、わからなければ何も進まないから、怒られたとしても聞くしかない・・・。
そんな辛い毎日が繰り返されていきました。

 

あるときたまらず私は仕事のノートを持ち帰ろうとしました。

「こんなのついていけるはずがない!!自分で勉強しなければ!!」

ですがノートを持ち帰ろうとした姿が見つかり、Mさんに止められました。
会社の規則で持ち帰ってはならないとのこと。

「それじゃ、とてもついていけない・・・」

 

弱気なことばかり言うな

このとき、私は毎日仕事が終わるとその日一日にやったことをレポートにして部長に提出することを義務付けられていたので、
そこに正直な気持ちを書くことにしました。

「仕事についていけてない」

「今日○○を習ったが、理解することができなかった」

 

するとマイナスなことばかりを書いていると部長から指摘されたので、ウソでも前向きなレポートを書くしかなくなりました。

「○○がわからなかったけど、理解できるように頑張ります」

そんな風に、意味があるかはわからないけれど締めくくりの言葉だけでも前向きにすることで、自分なりに「前向きなレポート」を作り上げました。

 

独りぼっちの立食パーティー

そんなある日のこと。会社で立食パーティーが催されました。

そのときの私にはよくわかりませんでしたが、普段には見かけないようなお偉いさんもそこにいたようです。

私ははじめ、何もわからずMさんのそばにいましたが、Mさんはお気に入りの後輩を連れてお偉いさんのところに挨拶に行ってしまいました。

そのお気に入りの人は私より数か月前に入社した人で、私と同じ紹介予定派遣の制度で間もなく正社員になる予定だったようです。

「彼女が気に入られているのは、うまが合うからなのかな、それとも仕事ができるからなのかな、どうしたら私もそんな風になれるんだろう・・・」

 

他の先輩の女性たちも楽しそうにおしゃべりをしながらパーティーを楽しんでいましたが、誰も私に寄ってくる人はありません。

大勢の中で感じる孤独。それは本当に辛いものでした。

 

「でも、これくらいのことは大丈夫」

学生時代に経験したひどいイジメや辛かったことを思い出しながら自分に言い聞かせ、時間が過ぎるのをひたすらに待ちました。

 

 

ついに一か月が経過

それからしばらくして、ついに入社してから「一か月」を迎えてしまいました。

一か月前に自分が書き留めたノートを見ながら、これからひとりで作業をしなければならないのです。

これはもう私にとって不可能でしかありませんでした。

そもそもノートに書き留めたときから満足に理解しておらず、また同時に5分刻みリストをつけねばならなかった焦りから全ての作業を急ぎでやっており、更にノートの持ち帰りが許されず復習もできなかったので、まるで何も頭に入っていなかったのです。

 

1か月経っても結局何もできない私にMさんもあまりに苛立ったのか、

昼食中に、

「あなたがもう少し働いてくれたらね」

と言われたことがありました。

私からすればお昼くらい仕事から解放して欲しかったのですが、私の仕事ぶりにイライラがMAXに達していたのでしょう。
とてもお昼の時間だから仕事を忘れて楽しく会話する、という雰囲気ではなくなっていました。

そんな風に私は仕事で追い込まれ、また満足に人間関係も作り上げることができず、追い込まれていく一方でした。

それでいてレポートには前向きなことを書かねばならず、もはやなすすべがありませんでした。

 

原因不明の体調不良

ある日原因不明の腹痛が起こりました。

腹痛は私にとって珍しいことではありませんでしたが、いつもはすぐに治るのに、この時は次の日になっても治る様子がありません。

それでも職場には行きましたが、いつものように作業がわからず行き詰まったとき、また腹痛がしてトイレに行きました。

鏡を見ると目が真っ赤。

 

いつもは5分刻みのリストを付けるために急いでいたので、ろくに見たこともなかった職場のトイレの鏡をじっと見つめました。

目が赤く、顔も赤く腫れている。

なんてひどい顔をしているんだろう・・・

その顔を見ていると、涙が流れてきました。

 

「住友商事で仕事が決まった!」
と私が言った時、実家の母が喜んで送ってくれたお祝いの3万円。

その母の気持ちを台無しにしたくなくて、また、初めてつかんだこの正社員のチャンスを逃したくなくて、「なんとか、なんとか」という気持ちでここまでやってきました。

ですが仕事に全くついて行けない焦りと、全く改善しない人間関係の苦しみ。

こんな挫折感を味わったまま投げ出したくはなかったけれど、体は明らかに赤信号をともしていました。

 

私には、このときもう選択肢が一つしか残されていませんでした。

もう、ここにはいられない・・

 

退社を決意

自分が全く仕事についていけてないこと、人間関係も築けていないこと、その全てを部長に打ち明け、退社したい旨を伝えました。

部長もそこまでのことを聞いて、それでもわざわざ私を引き留めたいとは思わなかったでしょう。

結局、入社から1か月半くらいのことです。
私はその日を以って、退社することになりました。

 

 

最後に、Mさんが私に声をかけてくれました。

「悪いことばかり言ったけど、目についたから言っただけで、悪い所ばっかりっていう意味じゃないから・・・」

本心か、ただのねぎらいかはわかりませんでしたが、その言葉を最後にもらって私は退社しました。

 

あの頃を振り返り・・・

あれから、あのときのことを思い出すことが何度もあります。

あのときから10年以上が経ち、この間色々な会社を経験しました。

そして今私はあの頃のMさんと同じくらいの歳になりました。

 

あのときたくさんの難題がふりかかり、自分はどうしてここまで何もできないんだとひどく落ち込みましたが、今考えてみるとその考え方は少し間違っていたのではないかと思います。

それは、自分自身が今10年前を振り返り、やはり10年の経験と差というものは格段に大きいと気づいたからです。

あのときはパソコンさえろくに触れなかった私が今はパソコンを使って自分ひとりでネットショップの仕事をしているのですから。

 

そうして今は、何か難題につまづいて投げ出したくなっても、
「これはどうやってもできないのか。それとも経験がないから今すぐできないのか。」と考えるようになりました。

実力が伴わなくてできないことと、ただ単に「経験がないから」出来ないこととは大きな違いがあると気づいたからです。

 

あのとき人間関係も上手に築けず仕事も途中で投げ出してしまったことは今になっても悲しい思い出ですが、
あのときより成長できたなあとこれからも振り返って思えるようになればいいなと思います。

 

以上、自分の住友商事での経験談を書きました。

ご覧下さった方々、本当にありがとうございました。







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